読んだり書いたり

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ライター白山羊ひつじのよしなしごと

はじめましてカポエイラ(レッスン1回目)

 2018年8の月、私は唐突にカポエイラの体験レッスンに行った。
 私の好きな漫画家の迫稔雄先生が、7月から『バトゥーキ』というカポエイラ漫画の連載を開始していて、カポエイラの事を何一つ知らない私は好奇心ひとつでファン仲間のAちゃんと共に、カポエイラの体験レッスンに行ったのだった。

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 本当の事を言うと、私は社交ダンスの体験レッスンを巡るつもりで、Aちゃんがダンス経験あるのを良い事に、社交ダンス体験に付き合ってもらおうと画策していた。しかし丁度良い時期の丁度良い場所に、丁度良い価格の体験レッスンがなかったのである。私にとって体験レッスンといえば1,000円~2,000円で50分は体験させてもらいたい。私は小さい客なのだ。
 小うるさい消費者の感想を加えれば、私は友人に付き合ってもらう場合に1,000円以上を出させづらい。私自身は体験する自体が楽しいが、同行者は私程楽しくないかも知れないし、同行者が楽しくないのがなんとなく嫌なのだ。逆の立場だったら、私は2,000円出して友人の体験に付き合うのは腰が重い。1,000円=ランチ代だと思えば気軽に行ける。

 価格の話から入ってしまったが、この日体験に行った教室には価格面でも掴まれた。
 「初回体験1,000円。1カ月以内に2回目のレッスンに来たら無料サービス」。つまり1回500円で2回体験できる計算だ。講師側も1回90分×2回で体験者にアピール出来る。
 これはなかなかのプレゼン方法だと思った。1回目の自分の感想を2回目で再体験または確認出来るのは良い。
 ちなみに東京のカポエイラの団体は、このシステムをよく使っているようだ。

 さて私とAちゃんは人生初のカポエイラ教室の扉を開いた。
 こういうのは縁が働くものなのだろうか。この日は我々の他に2人1組の体験者が来ていた。しかしもう1組は別の団体でカポエイラ経験者だったらしい。私が行ったのは漫画のタイトルを頼りに辿り着いた「カポエイラ バトゥーキ」という団体。漫画しか読んでない私にはバトゥーキと他の団体の違いもわからない。
 そして、正直なところ私は当初、第一回のカポエイラレッスンを終えるまで、カポエイラにそれほど強い興味を持ってはいなかった。
 私は麗人道の求道者であり、カポエイラは麗人道の中に含まれてはいなかった。ほんの、遊び心だったのだ。

 そんないい加減な私の目の前に現れたのは、戦いの女神アテナかくやあらんという女先生であった。カポエイラなるものは、サンバと動きが似ており、カポエイリスタを名乗るには男女ともにサンバの上達が外せないらしい。もちろん先生もサンバダンサーでもある。

 社交ダンスの女先生もスリムビューティだったし、女性ダンサーのスタイルと身動きの美しさには驚きの連続だ。そしてこのアテナのごとき先生は、しっかり筋肉質かつ女性らしい柔らかな流線形を保った体つき。こんな体型が日本人に可能なのかと度肝を抜かれた。そして連想した。ラテンの女性ダンサーもこうなのではないか。例えば動画で観たWDCのラテンアメリカン部門のユリア・ザゴルイチェンコ(Yulia Zagoruychenco)の麗し細マッチョ体型。

ユリアさんのサンバ

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ユリアはがっちりしているけど、日本人のカポエイラ先生はもう少し柔軟なしなやかさのある印象。これはすごい。

 そして、ここが私のおかしいところなのだけど、どうも脳の原因から結果への繋ぐ先を私はいつも間違う。ラテンダンサーみたいになりたい→カポエイラをやってみよう。何故だ。社交ダンスのラテンを習いに行けばいいのに何故そこでカポエイラなのか。
 無茶な発想が頭に浮かんだのもある。「カポエイラで体を鍛えて、ラテンダンスを習いに行けばいい」。無茶と言うのは主に予算的に。

 カポエイラはダンスと格闘技の要素を併せ持つ。ダンスは攻撃しないのでダンスとは言い切れないだろうけど、実のところカポエイラには、私がダンスに求めていたものがぎっしり詰まっていた。

 運動量
 習い始めたその日から、レッスン後筋肉痛になるほどハードな運動量で動ける。
 ダンスは習い始めの内はそこまで負荷の大きな動きはしない。

 ダンス
 踊るように円運動し、側転し、回転し、回りながら蹴る。足技。

 ペアダンス
 組手(JOGO)がまさに、ペアダンスの「組んで踊る」に匹敵する。即興で踊るサロンタンゴが「会話」と言われるように、ジョーゴも「会話」と例えられる。非言語コミュニケーションを体験できる。
 カポエイラジョーゴで相手に攻撃を当てに行くが、寸止めの応酬を行うのがルール。つまり、男女の体格差やウエイトや攻撃力の差があまり出ないのではないだろうか。

 音楽
 演奏が出来る。歌も歌える。独特の楽器を使う。この2拍子のプリミティブに思える音楽が、私は割と好きだ。


 
 昇段試験の頃合い迄、ユニフォームは不要
 ダンスシューズはいらない。裸足。

 インターナショナルな競技である
 世界中でやってる。外国人の生徒も複数。


 そしてカポエイラにしかないもの。

 ミット打ち
 ミットを蹴る。ちゃんと当たるといい音が鳴り、とても気持ちがいい。

 側転
 子供の頃から結構好きだった。

 逆立ち
 体勢は長持ちしないが子供の頃から出来なくはない。

 色々な蹴り
 蹴り大好き。子供の頃から。


 本当に偶然なのだけど、「そういえば子供の頃、好きだった」という動作がいくつもカポエイラの中にあったのだ。特に「側転」「逆立ち」は、運動苦手な自分にとって密かに「出来なくはない」というはかない特技だった。披露する場もないままだったが、なんと、ついにこの無意味な特技に出番が。

 カポエイラやっても麗人にも美人にもならないだろうが、急に私の中の麗人像が美輪明宏から遠ざかって「細マッチョ」の要素がプラスされた。ゴリゴリの6パックではなく、猫のごときインナーマッスルを。

 Aちゃんの細かな動機は実は聞いていない。しかし初回のレッスンで初めての楽器や初めての曲、初めての歌を体験し、ジンガというカポエイラの基本の動きを習った。蹴りもやった。先生の持つミットに蹴りを打ち込んだ。目の前でマッチョ達が蹴り合うのを見た。すべてが初めてで、次から次へと目を惹かれた。Aちゃんもきっと動機は私と似ているだろう。楽しいのだ。目一杯全身を動かせるし、男だとか女だとか考えなくていい。目の前には人間がいるだけだ。なんて幸せなんだろう。私はただ、私を伸ばして行けばいいのだ。楽しくて、練習が終わると気持ちがよくなる。体は心地よく疲れるし、次の日の筋肉痛も成長の証のようで満たされる。

 またそんな体験がしたくて、私はAちゃんと共に、翌週早速2回目のカポエイラレッスンに出掛けた。


本日の習った歌。タイトルはない。

私は「パラナエ」と呼んでいる。偉大なパラナを讃える歌。

youtu.be

 

#カポエイラ #バトゥーキ #迫稔雄