読んだり書いたり

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ライター白山羊ひつじのよしなしごと

はじめましてカポエイラ(レッスン1回目)

 2018年8の月、私は唐突にカポエイラの体験レッスンに行った。
 私の好きな漫画家の迫稔雄先生が、7月から『バトゥーキ』というカポエイラ漫画の連載を開始していて、カポエイラの事を何一つ知らない私は好奇心ひとつでファン仲間のAちゃんと共に、カポエイラの体験レッスンに行ったのだった。

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 本当の事を言うと、私は社交ダンスの体験レッスンを巡るつもりで、Aちゃんがダンス経験あるのを良い事に、社交ダンス体験に付き合ってもらおうと画策していた。しかし丁度良い時期の丁度良い場所に、丁度良い価格の体験レッスンがなかったのである。私にとって体験レッスンといえば1,000円~2,000円で50分は体験させてもらいたい。私は小さい客なのだ。
 小うるさい消費者の感想を加えれば、私は友人に付き合ってもらう場合に1,000円以上を出させづらい。私自身は体験する自体が楽しいが、同行者は私程楽しくないかも知れないし、同行者が楽しくないのがなんとなく嫌なのだ。逆の立場だったら、私は2,000円出して友人の体験に付き合うのは腰が重い。1,000円=ランチ代だと思えば気軽に行ける。

 価格の話から入ってしまったが、この日体験に行った教室には価格面でも掴まれた。
 「初回体験1,000円。1カ月以内に2回目のレッスンに来たら無料サービス」。つまり1回500円で2回体験できる計算だ。講師側も1回90分×2回で体験者にアピール出来る。
 これはなかなかのプレゼン方法だと思った。1回目の自分の感想を2回目で再体験または確認出来るのは良い。
 ちなみに東京のカポエイラの団体は、このシステムをよく使っているようだ。

 さて私とAちゃんは人生初のカポエイラ教室の扉を開いた。
 こういうのは縁が働くものなのだろうか。この日は我々の他に2人1組の体験者が来ていた。しかしもう1組は別の団体でカポエイラ経験者だったらしい。私が行ったのは漫画のタイトルを頼りに辿り着いた「カポエイラ バトゥーキ」という団体。漫画しか読んでない私にはバトゥーキと他の団体の違いもわからない。
 そして、正直なところ私は当初、第一回のカポエイラレッスンを終えるまで、カポエイラにそれほど強い興味を持ってはいなかった。
 私は麗人道の求道者であり、カポエイラは麗人道の中に含まれてはいなかった。ほんの、遊び心だったのだ。

 そんないい加減な私の目の前に現れたのは、戦いの女神アテナかくやあらんという女先生であった。カポエイラなるものは、サンバと動きが似ており、カポエイリスタを名乗るには男女ともにサンバの上達が外せないらしい。もちろん先生もサンバダンサーでもある。

 社交ダンスの女先生もスリムビューティだったし、女性ダンサーのスタイルと身動きの美しさには驚きの連続だ。そしてこのアテナのごとき先生は、しっかり筋肉質かつ女性らしい柔らかな流線形を保った体つき。こんな体型が日本人に可能なのかと度肝を抜かれた。そして連想した。ラテンの女性ダンサーもこうなのではないか。例えば動画で観たWDCのラテンアメリカン部門のユリア・ザゴルイチェンコ(Yulia Zagoruychenco)の麗し細マッチョ体型。

ユリアさんのサンバ

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ユリアはがっちりしているけど、日本人のカポエイラ先生はもう少し柔軟なしなやかさのある印象。これはすごい。

 そして、ここが私のおかしいところなのだけど、どうも脳の原因から結果への繋ぐ先を私はいつも間違う。ラテンダンサーみたいになりたい→カポエイラをやってみよう。何故だ。社交ダンスのラテンを習いに行けばいいのに何故そこでカポエイラなのか。
 無茶な発想が頭に浮かんだのもある。「カポエイラで体を鍛えて、ラテンダンスを習いに行けばいい」。無茶と言うのは主に予算的に。

 カポエイラはダンスと格闘技の要素を併せ持つ。ダンスは攻撃しないのでダンスとは言い切れないだろうけど、実のところカポエイラには、私がダンスに求めていたものがぎっしり詰まっていた。

 運動量
 習い始めたその日から、レッスン後筋肉痛になるほどハードな運動量で動ける。
 ダンスは習い始めの内はそこまで負荷の大きな動きはしない。

 ダンス
 踊るように円運動し、側転し、回転し、回りながら蹴る。足技。

 ペアダンス
 組手(JOGO)がまさに、ペアダンスの「組んで踊る」に匹敵する。即興で踊るサロンタンゴが「会話」と言われるように、ジョーゴも「会話」と例えられる。非言語コミュニケーションを体験できる。
 カポエイラジョーゴで相手に攻撃を当てに行くが、寸止めの応酬を行うのがルール。つまり、男女の体格差やウエイトや攻撃力の差があまり出ないのではないだろうか。

 音楽
 演奏が出来る。歌も歌える。独特の楽器を使う。この2拍子のプリミティブに思える音楽が、私は割と好きだ。


 
 昇段試験の頃合い迄、ユニフォームは不要
 ダンスシューズはいらない。裸足。

 インターナショナルな競技である
 世界中でやってる。外国人の生徒も複数。


 そしてカポエイラにしかないもの。

 ミット打ち
 ミットを蹴る。ちゃんと当たるといい音が鳴り、とても気持ちがいい。

 側転
 子供の頃から結構好きだった。

 逆立ち
 体勢は長持ちしないが子供の頃から出来なくはない。

 色々な蹴り
 蹴り大好き。子供の頃から。


 本当に偶然なのだけど、「そういえば子供の頃、好きだった」という動作がいくつもカポエイラの中にあったのだ。特に「側転」「逆立ち」は、運動苦手な自分にとって密かに「出来なくはない」というはかない特技だった。披露する場もないままだったが、なんと、ついにこの無意味な特技に出番が。

 カポエイラやっても麗人にも美人にもならないだろうが、急に私の中の麗人像が美輪明宏から遠ざかって「細マッチョ」の要素がプラスされた。ゴリゴリの6パックではなく、猫のごときインナーマッスルを。

 Aちゃんの細かな動機は実は聞いていない。しかし初回のレッスンで初めての楽器や初めての曲、初めての歌を体験し、ジンガというカポエイラの基本の動きを習った。蹴りもやった。先生の持つミットに蹴りを打ち込んだ。目の前でマッチョ達が蹴り合うのを見た。すべてが初めてで、次から次へと目を惹かれた。Aちゃんもきっと動機は私と似ているだろう。楽しいのだ。目一杯全身を動かせるし、男だとか女だとか考えなくていい。目の前には人間がいるだけだ。なんて幸せなんだろう。私はただ、私を伸ばして行けばいいのだ。楽しくて、練習が終わると気持ちがよくなる。体は心地よく疲れるし、次の日の筋肉痛も成長の証のようで満たされる。

 またそんな体験がしたくて、私はAちゃんと共に、翌週早速2回目のカポエイラレッスンに出掛けた。


本日の習った歌。タイトルはない。

私は「パラナエ」と呼んでいる。偉大なパラナを讃える歌。

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#カポエイラ #バトゥーキ #迫稔雄

2018.9.17(祝・月) 朝カポエイラ

 いつも夜の21時過ぎから深夜までがレッスン時間帯のカポエイラ。今日は祝日の時間変更ありで午前10時半からレッスンだった。いつもと違うクラスに出たので初めて会う人も何人かいた。
 メンバーがちょっと変わるのも楽しい。超初心者の私がおこがましいんだけど、普段見たことない動き方をする人が現れると勉強になる。こういう動きの人もいるのかと。この人による動き方の違いは、単に段位の違いなんだろうか。それとも一人一人の個性なのかな。

 先週はケイシャーダという後ろ回し蹴りを習ったのだけど、これが覚えられない。先生のお手本を見せてもらっても、どっちの足がどう動いているのか、いつ軸足と蹴り足が入れ替わったのかわからない。帰宅して他流派の動画を見つけて見てみても、何がどうなっているのか全然掴めない状態だった。

ケイシャーダ(基本の蹴りのひとつ)

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 先生の説明と、稽古仲間で友人のAちゃんの「今の合ってます」の言葉を頼りに、なんとかやってみる。なんか変だけどとにかくしつこく動画を観て動きを追って再現に励んだ。

 次のレッスンでも上手くやれなかったのだけど、更にしつこく練習したらだいぶ慣れた。
 新しい簡単な動き(基本の動きジンガの応用の動き)を教わったが、私にその場でどうも覚えきれない。これも家帰って練習。いつか、もう少し慣れたらその場で覚えられるようになるのだろうか。決してむずかしい動きではないはずだし、私と同時期に練習を始めたAちゃんは、その場で覚えて出来るようになる。

 前半30分の演奏と歌の時間は、今までの歌に加えて新曲を習った。

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 タイトルはないらしい。愛称で「カポエィラ ヴィンセール」と呼んだり、団体によっても異なるらしい。歌の意味は、「月夜の他流試合でカポエラが勝った。第一試合で柔術に勝った」みたい戦意高揚の歌。シンプルかつ勇ましい歌が多くて楽しい気分になるよ。
これまでの曲よりテンポが速い。私はタンバリンによく似たバンデイロという楽器を叩いてリズム隊。バンデイロに慣れる事が基本みたいだ。

 後半60分のカポエイラレッスンの私の目下の課題はこれ。

「ホレー コン アウー」

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 ホレーが「回る」、アウーは「側転」。しゃがんで回転した避けの動きと、側転で移動する動きのルーチン。これを覚えてジョーゴ(組手)で使えるようにすること。

 側転は苦手ではないんだけど(上手くもないが)、体の使い方が下手くそでどうもこれやってるときに左足の付け根股内を痛めたらしい。時間の経過と共に痛みは引いているが、ほんにやわよのう……。ちょっと前はホレーで何故か腿の表が痛くなるという不思議な状態になっていた。痛まなくなったと思ったら次はそれか。技を繰り出すたびに負傷したりアキレス腱切ったりするジェロニモのごとし。人間だもの。

 強くなりたい。
 強くなって格闘技の勇ましさと、ダンスの艶っぽさ両方身に付けられるようになりたいわー。先生のように。

 帰宅したら右膝にあざも出来てた。なんだろうね。多分練習中だろう。足の付け根も痛むのでストレッチしたり、マッサージしたり。しかしおかしなもので、この傷がね、だんだん勲章みたいに思えて来る。頭大丈夫か。弱さの証だというのに。
 大学生の頃、他大の男子学生がサッカーで膝に穴を空けて「こんなの普通。なんともない」と言っていたのを思い出す。東大生だったはずなので馬鹿ではないから、本当に普通なんだろう。その記憶から、怪我も名誉に思えてくるんだろうけどこれは感覚としてやばいのでは。
 練習という戦いに挑んだことが名誉、でいいのかな。怪我して帰って来たということは、自分の現状より高い目標に挑んだというところが。そう考えると、このおかしな自信の湧き方もまともな根拠のように思えて来るが。

 帰りは昼時だったので、Aちゃんとランチ。

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 東京屈指の繁華街だけど、いつも深夜に終電に駆け込んでどこにも寄りようがなかった。今日は人気店でハンバーグを食べてしまった。30分くらい行列に並んだけど、店でゆっくり出来ない事は目に見えていたので、行列中に積もる話をして待ち時間終えるのあっという間だった。久々に女友達と渋谷を満喫した気分。

 「カポエイラ」で動画検索すると男の先生と男の生徒ばかり出て来るけど、私のとこは先生も女性で生徒にも女性も多い。年代も幅広い。50代から20代までいる。男性は20~30代かな。男子は若いね。
 合気道も女性率高めの格闘技だけど、カポエイラはより攻撃的で女性もやってる格闘技。おまけにサンバと音楽や足の動きに近いものがあり、ダンスの要素も持っている。
 一回お試しで行って、先生の強い格好良さと女性らしい美しさのある動きにすっかり胸を打たれ、そして運動量の多さに爽快になり、すっかりハマってしまった。

 

2018.9.10mon~9.16sun

9月10日(月)
 涼しくなってきた。助かる。

9月11日(火)
 ネットでカリスマホストのローランド様という人の事を知る。インタビュー記事を読んだらとても面白くてあれこれ読んでしまう。この方が体型維持のために毎日1時間欠かさずジムトレーニングをしていると知り、早速影響を受けて自宅で一時間、タンゴエクササイズとジルバとカポエイラの練習。汗だく。


9月12日(水)
 まだローランド様効果が続いており、今夜も自宅で一時間、タンゴエクササイズとジルバとカポエイラの練習。汗だく。


9月13日(木)
 KUNILABOの講座『ベンヤミンを読む』初回。予習して行って良かった。4回でベンヤミンという書き方自体が難しい読解困難かつ多くの著書を残した哲学者の思想を学ぶには、相当な駆け足が必要と思われる。
 自分がわからなかったところに先生の解説が入ると「お、これは皆わからないのだな」とほっと出来る。そういう意味でも予習はいいと思った。しかしこれは、本当に難しい……。

 この講座が夜20:45までなので、21:20からのカポエイラレッスンは行けないのではと諦めていたけど、遅刻してもゆるされるレッスンだという形跡を過去確認していたので、遅刻しても参加しようと出掛けて行く。前半音楽の時間、後半カポエイラというプログラムなのだが、音楽の時間の途中に間に合った。行って良かった。前回習ったケイシャーダ、ジンガ→メイア・ルーア・ジ・フレンチ→後ろ回し蹴り→ケイシャーダで繋げようとすると全く出来ない。逆立ちが少し出来るようになった。
 来週はカポエイラに出られないので先生に伝えたら「ジンガが出来るようになったら、超初心者クラス以外も出て平気だよ」と言ってもらい、別の曜日のクラスに初参加の予感。きゃー。


9月14日(金)
 木曜のタンゴレッスンに行けなかったので、金曜のクラスに出ようと教室に行ったら休みだった。というか今月の予定表にちゃんと書いてあるのに見なかった私が悪い。しかしたまたま先生が現れ、「これからWSだけど、せっかく来たんだから見て行く?」とお愛想を言って下さる。優しい。私は好物を出されたら遠慮なく食べる方なので、日本人の癖にこの言葉に食いついて少しWSを見学させてもらう。そして超有名なダンサーが次々現れてしまい、あまりに場違いなので萎縮して去った。根性なし。
 急用の人に呼ばれ、夜中まで話し込んで疲れて帰宅して寝た。ローランド様の「一日休んだら一年やらない」という厳しいお言葉が寝る寸前まで私の脳を苛むのだった。根性なし。


9月15日(土)
 3連休初日。木曜のカポエイラで体中痛い。掃除をした。体が痛くてトレーニングをさぼり、またローランド様の「一日休んだら一年やらない」という言葉が現実となって私を責め苛むのだった。私はカリスマホストにはなれない。それでいいのか本当に。
来週の哲学カフェの内容が詰まって来てテンションが上がる。
 NHKスペシャル 未解決事件「File.07 警察庁長官狙撃事件」の録画を夫と観る。
 イッセー尾形が狙撃を自供したスナイパーNの役。超絶インテリで革命家を自称するNだが、オウム真理教のような素人集団に国家転覆を先にやられてご立腹だった。南米に偽装家族を持っていたり、なんだか『ゴーン・ガール』みたいなスナイパーN。警察が認めない有力真犯人を認めない事まで含めてNHKが番組にしている事に希望を感じる。


9月16日(日)
 市民ミュージカルを観に行った。ダンサーの動きを以前より追えるようになっている。嬉しい。ダンス熱が高まる。
 帰宅して今日こそトレーニング。カポエイラの練習とタンゴエクササイズ。ジンガ→メイア・ルーア・ジ・フレンチ→後ろ回し蹴り→ケイシャーダのルーティンが大分成功率が上がって来る。これで100%失敗しないようになれたら、レッスンでも2回に1回はルーティンが成功するだろう。自主練で出来ても、レッスンだと緊張して出来ない。もっと体を動きに慣れさせなければ。

2018.9.2sun 〜 9.9sun

9月2日(日)

四ツ谷へタンゴのワークショップへ。「初心者OKの練習会&ミロンガは貴重」というTwitter告知の一文が殺し文句となり、出掛ける。

人生初めてのタンゴ体験の人もいて、参考になる。初めての人も皆、堂々と踊っている。私には初めての事でも堂々とやるようなところが足りないんだろうな、と自分では思う。どうも心の中に「初心者はこう振る舞わなくては」という定型があり、そのように振る舞おうとしてしまう。例えば、「下手くそである事を常にすまなそうにしている」とか「おどおどする」とか。類型初心者のベタなパントマイムを演じる事がコミュニケーション方法だと思い込んでいるようだ。この癖は一体いつから自分に身に付いたのだろう。他人からの攻撃を避けるための「腹見せ」としてこれをやっていることはわかる。しかし、何をきっかけに自分がこの手の「腹見せ」を手段として、それを「有効だ」と認識し、あまり有効でない場面も多いと気付いてからも継続しているのか。すごく卑屈な動作だと自分でも思う。

 

主催側らしき女性も一緒に練習でリードをして踊ってくれた。女性リーダーは格好良い。そして踊り終わりにハグがつく。ハグが上手い。上手いハグは癒される。私は同性には安心して身を任せてしまう方なので、女性からハグされると幸せな気持ちになる。男性は家族を除くとどうも緊張して体がかたくなって疲れてしまう。リラックス出来るようになるといいな。

練習3回目にしてミロンガも出た。迷ったけど、主催者が私を下手くそだとわかってて参加していいと言ってくれているミロンガだし、これは貴重な機会だ流れに乗ってしまえと思って乗った。心優しい若い男性が踊りに誘ってくれた。私にあれこれ教えようとしない。両手を繋いで歩くだけのダンスだったけど、何も言わずに相手をしてくれた。練習時間は終わり。上手く踊れなくても、気を楽にして楽しく踊った。

タンゴ歴の長い上手な男性も一杯いて、そういう人が誘って下さって踊ってもらえると嬉しいのだけど、つい「こんな私で申し訳ない」と思ってしまうし、そう思いながら踊ると疲れる。

 

 

9月3日(月)

 Iゼミのユダヤ説話講座を受講。聖書解釈の技法の論理性にはいつも驚く。もっと周辺知識が頭にはいっていれば、同じ講座同じ時間から得るものも多いのだろうけどな。効率よく知識を入れていく方法がほしい。

講座後は恒例の飲み会。アメリカ南部紀行の話を聞く。

なんとなく「何故トランプ大統領は国内で支持を受けたか」という話題になる。この件については、「一面において、トランプ氏の教養を不要とする成金人生が、欧州的貴族社会から独立したアメリカ革命の流れの中にいる」という説(これも他の市民講座で聞いたのだけど)に私は説得力を感じている。現代の「身分」とは「教養の有無」に潜んでいるという見方。つまり、ヒラリー候補は教養の人であり、貴族身分とみなされた。教養のない人には教養のある者同士の特有の関わり方が耐え難いというもの。彼らの振る舞いから、教養のない者たちは疎外され、馬鹿にされていると感じるというもの。「バカで悪いか。これだけのパワー(金)を手に入れられるぞ」というのを体現しているのがトランプ氏。

この教養ある/ないの断絶は日本でも他人事ではないと思う。ただ、この「/」は、分厚い層を秘めているように思う。この「/」に類するひと(私は教養があるとは言えないが、教養を嫌いではないしむしろ好きだ)とはなんなのかという気もしている。

 

 

9月4日(火)

 アメリカのテレビドラマ「BrBa(Braking Bad/ブレイキング・バッド)」のファイナルシーズンを観る。夫婦で揃って観ていたり、1シーズンを終えるごとに休憩して別のDVDを観たりしていたために全編見終えるまでに何と3年半掛かった。

  50歳になったホワイト先生が悪の限りを尽くし、身の回りの人達を巻き込んで不幸にし、華麗に散っていくやりたい放題人生の話。私には上手く説明できないが、このドラマとホワイト先生の解説を読み、「家族を不幸にして自分も破滅して行く阿保」を単純に「阿保」と言えなくなった。ただ「阿保」と断じては断絶して終わってしまうなにかがあるのだね。ドラマだからホワイト先生は破滅して死ぬけど、現実では一線をこえずに踏みとどまってほしいし自分も踏み止まっていたい。

台風到来。西日本の台風災害が歴史的水準だった。

 

 

9月5日(水)

仕掛かりの原稿を納品。深夜まで掛かった。

 

 

9月6日(木)

  タンゴとカポエイラのレッスンの掛け持ち受講の日。

  タンゴもカポエイラも私は最低でも3ヶ月はスタートが遅い。そのクラスで一番始めたのが遅い生徒だ。それにしても私はステップを覚えるのが遅いなあ。言い換えると毎回完璧に左右逆に再現しているのか。

  この「覚えられない」には色々な理由があるらしい。心当たりのある理由はウェブで拾えたので、それ以外の私見を残す。

  日舞の時からそうだが、私は「踊りは不自然な事をするもの」「日常と違う動きをするもの」と思い込んでいるようだ。手足左右反対に出したり動かしたりしているという事は、自然かつ合理的な動きに逆らい続けているという事ではないか。

  日舞では首を右に傾けるか左に傾けるかをほぼ100%逆に間違い続けた。思いつく方向が常に逆という事は、何かを私は思い込んでいる。先生は「これはこっちの方向にあるものを見る動作です。逆から見ると不自然な動きになります。人の自然な動きでは、見づらい角度から物をみようとしないでしょう」と繰り返し仰っていた。

  確かミロンガで、ベテランのダンサーが「どっちの足を出すのか考えなくていいですよ」と仰った。相手がどっちの足を出すのか考えない。そして見ることもない。ど素人でもそれでも相手に合わせて動けるのなら、人の自然な無理のない動きのなかに踊りもあるはずだ。

  踊りの動きに慣れるまで練習してみる。

  踊り、を、自分の日常にしてみる。

 

  ああ、麗人道、こんなに険しいものだったのか……。「少しでいいので覚えましょう」の難しさよ。

 

9月7日(金)

 市民講座で『源氏物語』受講。今日から後期である。前期からの「橋姫」の続きを読んだ。

 この講義ほんっとうに面白いので、読書好きの人にはどんどん参加してほしい。場所が国立で都心から離れているので、アクセスの難しい人が多いのかもしれないが。

何が良いって、この講座を受講したら『源氏物語』を教材に現代の色んな文学を読む方法を学べると思う。毎回一文一文をかなり丁寧に読んで行くので、一語一語の意義に着目して読解する。先生は博士なので読解で詰まっても、読むための用例も凡例もどんどん引いて導いてくれる。

  私は相当にこの講座を推しているのでこれからも宣伝する。今期はタイミングを逃してしまったが、次は狙って宣伝に行く。

 

https://www.kuniken.org/course

 

 

9月8日(土)

  アーレント研究会の研究発表とシンポジウムを聴講しに、会場の中央大学後楽園キャンパスへ。学会的なものを聴講するのは2回目。流れがなんとなくわかって来た。

  しかし哲学の研究発表は最低限日本語訳の原書を読んである程度内容を把握出来てないと、議論の素材自体がわかってないのでその先の発展について行けない。もっというなら原書の引用なんて先生方にとっては高速で読み飛ばして論点に入りたい部分だろうから、ものすごく早口。アーレントやカントでこれをやられると素人は眠る以外に出来る事がない。というほど意識が遠のく事はなかったけど。今期はベンヤミン講座をとってしまったので、哲学講義に慣れておきたかった。ベンヤミンの話題も少し出ていた。なかなかいい事を言っているようだな、ベンヤミン。難しくて何言ってるかわからないが。

 

9月9日(日)

  疲労回復のために寝ていた。洗濯して掃除した。請求書も出したい。日が暮れてあまり汗がでなくなったら、カポエイラとタンゴと社交ダンスの練習をしようと思う。カポエイラの筋肉痛も引いて来た。レッスン中にちゃんと覚えられず、上手く出来なかったケイシャーダを決めたい。サンドバッグ欲しい。

 

夏の終わりの夏オペラ

2018.9.1 日曜

 朝から掃除手伝いの日。いい汗かいて午前中を終える。
 しかしここのところ、早く寝れば5時台に目が覚めてしまう。たぶん体力的にそれ以上続けて眠れないんだろうけど、午前中に二度寝の眠気が来て困る。
 結局少し昼寝。
 夫とこの夏最後となろうかき氷を食べ、夕方からオペラへ。


【鑑賞】

オペラ『ナブッコ』 新宿区民オペラ(新宿文化センター)

 このところ英雄譚(ペルセウス的な)に飢えており、オペラの古典的類型的王子様役にかなり期待していた。前奏の管楽器の勇ましい音が加わると「英雄来る!」感が高まってテンションあがる。期待にたがわぬテノールでイズマエーレ登場。王子様声で良かった。
 あらすじを追っていると、イズマエーレとメゾゾプラノのフェネーナの善人役の二人が物語を回す役に思えたけど、ナブッコバリトン)とアビガイッレ(ソプラノ)でした。舞台も旧約聖書だし、信仰を回復するナブッコの活躍が見せ場。

 そしてアビガイッレは良かった。
 リサイタルでソプラノ歌手のパワフルさを観ていると、「病に負ける女(椿姫)」とか「天然色男に命懸けちゃう女(リゴレット)」だけでは惜しいと思っていたのだ。しかしちゃんと悪女役もソプラノに用意されたいたのね。アビガイッレは奴隷の子に生まれ、結局父親のナブッコから端に避けられてしまうが、持ち前のエネルギーを爆発させて過激な下克上に走る。イズマエーレを脅迫しながらその愛を迫るやりたい放題もいい(失恋しちゃいますが)。
 とはいえ、これでアビガイッレが勝つわけにはいかないので、最後は服毒して回心して果てるのですがね。

 楽しかった。
 特にこの公演は衣装が面白かった。アビガイッレの衣装は濃い朱色。ナブッコは王様パワーに溢れると深紅がプラスされ、王様パワー減ると水色。イズマエーレも水色。ザッカーリアはアビガイッレより濃い目の赤。フェネーナは濃い青。
濃い色は折れない人々。濃いほど折れにくい。イズマエーレは自己を貫いた後、葛藤する事になる。アビガイッレは最後に自殺を選ぶからかな。ナブッコの衣装色変化が面白かった。

 

ダンスシューズを買った話


 「もしかしたらこれが最初で最後の体験かもしれないから」と、思いつめながら体験レッスンに行っている。
 なんでも体験してみたらいいよ、と、人は言うが(しかし具体的に誰の言葉なのか思い出せない)、結局体験と言ってもある程度「ここ良さそう」と思った教室にしか行ってない。
 大きな声では絶対に言えないが、昔の習い事のとある教室は初回からなんとはなしに違和感があった。多分講師の方も他の人もそう感じていただろう。私の存在への違和感。
 しかしその頃私は色々あって心が石になっており、あまり色々考えられないし、教室はどこでも同じだと思ってそのままそこにしばらく通っていた。結果、誰にとってもあまりいい事にはならなかった。
 そしてその経験があるから思うのだ。馴染めない場所は誰にでもあるし、馴染めない場所で無理に居ようとすることもない。そこにいる人が受け入れてくれて、自分も居心地のいい場所に行けばいいのだ。

 しかしだよ、居心地が良い、どこも。どの体験も。
 そしてただ通う場所が増えて行ってしまうという状態に。

 挙句の果てのこの靴である。

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 Twitterでダンスの先生が良いと仰っていたケントダンスダンスシューズ
 つま先カバーのスタンダード対応。
 そしてサイドが空いたラテン対応。
 極め付きの、ヒールは7cmのかつストラップ付のアルゼンチンタンゴ対応だ。

 初心者のダンスでは靴はそれほど選ばないと聞いた。お店の人によると、「週に1回の練習で日陰で休ませて1年耐久、週2回なら半年です」との事だった。この靴が緩む前に、私はどれかに心を決められるのだろうか。それとも、延々迷い続けてどれも半端になるのだろうか……。

 

2018.8.30木~8.31金

8月30日から夏休みを取った。
といっても私は兼業ライターなので、会社勤めの休みの日はライター仕事である。
木曜は午後から都内で2件取材。最高気温38度。猛烈に暑い。
と思っていたら、2件目は急用でキャンセル。WOW...
WOW...と軽く言うしかないのでそう言っておくけど、とても悲しかった。
こんなことは不謹慎かもしれないけど、もっと早くキャンセルに気付いていれば夜のタンゴレッスン行けたのに。キャンセルの連絡は私がレッスンに間に合う時刻には届いていたので、1件目を終えて暑さでフラフラになり、ファストフードでアイス食べてくたばっていた私が悪い。

2件目の分は、編集長に相談したら光の速さで別の取材先をあたってくれた。
そしてそれがとんでもない事態に。

金曜日。
前日は暑さで疲れ切ったので、『Breaking Bad』5シーズンエピソード8を観て早々に寝てしまう。そんなわけで金曜は朝5時から跳ね起きた。しかしじょじょに体調が悪くなっていく。周期なので仕方がない。とりあえずサボっていたジンガと前方半月蹴り、そしてジルバとスローリズムの習ったステップをさらう。タンゴのバルドッサとエクササイズも少しやる。汗こそすぐにだくだくするけど、運動量的には本当にちょっとなんだよなあ。

だとかぼやいていたら編集長から連絡。
なんと夕方に電話取材する事に。
慌てて電話取材の準備をする。しかし今時はスマホiPodのイヤホンで録音も両手を自由にしてのメモ取り取材が出来る事に驚く。電話取材が終わったら今日こそタンゴレッスンだと万全の態勢でアポイント時間に電話。不在。
元々突然のお願いなので、こういうのは仕方がない。
もうタンゴレッスンは諦めた。
諦めて、ねばってその日の内に電話取材を終える。ご協力感謝。
そして15分で聞き出した事でなんとなく原稿を書いていたら2500字を超えた。訪問して1時間超話を聞いてとりあえず要点を書き出しても3000字行かないのに。私は取材の仕方を間違っているのでは。